蔵王山 |
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行程 (着/発)(+++:電車、===:バス、---:徒歩) ◆10月9日 ◆10月10日 |
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山日記 遠刈田温泉で蔵王行きに乗り換えたバスは秋に色づくエコーラインを蔵王に向けて進んで行った。 |
蔵王のシンボルはエメラルドグリーンに輝いていた |
僕が内心「きれいだなぁ」と思っていると。。。 おばさんの「ぶぅわわわーああぁ!きれいー」の雄叫びが僕の後頭部を直撃する。僕の小さな感懐なんかいとも簡単に蹴飛ばしてしまうのだ。 感嘆符の洪水はかえって気分を損ねてしまう。刈田峠につく頃にはこれでもかと浴びせられる「きれい」の言葉に消化不良気味だった。 御釜は観光地だけあってさすがに人が多い。湖面はエメラルドグリーン色に鮮やかに輝いて奇麗だがどこか不気味でもある。 |
御釜付近から見た熊野岳 |
山屋の悲しい習性なのか、どんなに素晴らしい景色でも人が(特に一般観光客)多いとそれだけで興醒めしてしまう。もしエコーラインが無く、下からここまで自分の足で登って来て目の前に御釜のエメラルドグリーンが鮮やかに映し出されたらどんなに感動したことだろう。 熊野岳まで来ると観光客は減り、山の匂いがして来た。山頂はなだらかで見晴らしが良い。 快晴の空の下、おにぎりを食べて出発しようとして考えた。「あれ?僕はこれから何処に行くのだろう?」蔵王行きは急だったので計画は立てていなかった。今日の宿泊場所すら決めていないことに気がついた。 |
熊野岳山頂 木も草もない褐色の平原 |
景色を楽しみながら歩いていればそのうち宿もみつかるだろう。地図を見ると片貝沼にロッジがあるので行ってみることにした。 地蔵山は熊野岳の荒涼とした山容とは違い、緑の中に赤や黄色に紅葉した木々が点在していて綺麗だ。 ゲレンデを駆け下りて片貝沼に着いた。早速2軒のロッジに宿泊できるか尋ねてみると、二軒とも「予約客以外はダメだ」と断られた。普通、山小屋だと断られることはまず無いのでこの返答に少しあせった。 |
片貝沼と三宝荒神山 この時はまだ「そのうち宿が見つかるだろう」と余裕があった |
「他にもあるさ」と地図を見るとドッコ沼に4件宿がある。仕方ないそこまで行ってみよう。 途中、五郎岳に登るが宿が決まっていないことが気になって落ち着いて景色を見ることが出来ない。ドッコ沼に着いて早々順に宿泊できるか尋ねてみた。一軒目「今は季節外でやっていない」、二軒目「予約客以外はダメ」と言う返答でとうとう4軒目。しかし4軒目も「予約客のみ」と断られた時には目の前真っ暗状態になった。「マジにヤバイ!」これには困った。「今の時期、野宿は寒そうだ。どうしよう?」時間は午後3時であと2時間もすれば日が沈むだろう。早く泊まる所を捜さなくてはならない。蔵王温泉まで降りようか?それとも訳を話してもう一度宿泊できないか交渉してみるか?とりあえず近くの公衆電話から片貝沼のロッジに電話してもう一度交渉してみた。 |
「一人だけど何とかならないですか?」「少しお待ちください」電話の向こうでなにやら相談している。すこし間を置いて「だいじょうぶです」との答えは天使の声に聞こえた。やっぱり山形の人は良い人だ。ほっと安心して片貝沼に引き返した。 食堂で他の客と一緒の食事。他の客は家族ずれ、恋人同士とにぎやかである。その中でぽつんと一人の食事は寂しい。しかし食事が豪華で寂しさを忘れてしまった。宿泊料9000円にしては豪華な食事を苦しいほど食べてしまい、部屋に戻って布団にごろんと寝転んだまま動けなくなってしまった。 |
前山から刈田岳を振り返る ジグザグの車道が痛ましい |
翌日、刈田峠まで引き返し南蔵王へ向うことにした。熊野岳から宮城県側を眺めると一面の雲海に覆われていた。赤褐色の荒涼とした山頂と秋の太陽に白く輝いている雲海が実に対照的だ。 避難小屋では宿泊したらしい4人が朝食中。なんか山慣れしている風貌でちょっと近寄りづらい。 刈田峠から南蔵王への縦走路へ突入。今までの喧燥が嘘のように静かで自分の住み慣れた古巣に戻ってきたみたいで安堵感を覚えた。 |
芝草平へ向う途中から見た屏風岳 広い山頂だ |
杉ヶ峰への途中、振り返ると刈田岳をジグザグに切り刻むハイラインが痛々しい。その奥には褐色の熊野岳がのぞいている。 杉ヶ峰山頂から芝草平の草紅葉の中に転々と池塘の水面が光って見えた。その先には赤、黄、茶に紅葉した草木がアクセントとなって緑の樹林帯が広がっている。屏風岳はなだらかな山容をしているので一層広大に感じる。 |
屏風岳から不忘山へと向う 左に見えた後烏帽子岳の紅葉が綺麗だった |
山中で池塘や沼を見ると何故か嬉しくなってしまう。砂漠でオアシスを見つけた旅人のように清涼を感じるのか?、誰も居なくなった公園の砂場で見つけたビー玉が宝物に映るようなものなのか?。 だが、はやる気持ち駆け下りた芝草平は無残だった。人があちこちに歩き回って踏み荒らされ草地の上では家族連れがシートを広げて昼食中。子供達の笑顔とは裏腹に僕の気持ちは沈んでいった。僕に出来たのは芝草平の永遠をただ願うだけだった。 |
不忘山のガレ場を降ると一面黄色に紅葉していた |
屏風岳からの展望はまた一味違う紅葉を見せてくれた。山頂からの不忘山、水引入道は黄色が山を覆いつくしていてその黄色の中に赤や緑が点在している。きっと神様のパレットにはもう黄色しか残っていなかったのだろう。それに高い木が無いので山肌がビロードみたいに滑らかである。 屏風岳から不忘山までのあまりに展望の良い稜線を楽しんで歩いたので不忘山に着いた時には「ちぇっ!もう終わりか」と残念になる程だった。すばらしい展望を思い切り脳裏に焼き付けた。山の名も不忘山なのでこの景色を決して忘れることは無いだろう。 でもやっぱり心配なので写真を撮っておこう。 |
●山麓をゆくへ |