山でパンツは何日間はけるか?

会社の先輩の小野寺さんと仕事をすると雑談は自然と山登りの話になる。小野寺さんは結婚してから山登りは休止中なので一緒に登った事は無い。この人、山登りの話になると最後は必ずパンツの話になる。

小野寺


小野寺


小野寺






小野寺






小野寺

小野寺


「縦走の時、パンツは何枚持って行く?」
「はくパンツの他に予備として1枚の計2枚です。予備のパンツは帰りの電車に乗る時にはき替える事が多いですね。」
「という事は縦走中は同じパンツをずっとはいているということか!」
「おまえ、そりゃ不潔だよ。俺みたいな紳士になると毎日履き替えるね!」

「それじゃ、縦走の日数分のパンツを持って行くんですか?」
「いや!パンツは一枚で十分。そこは頭を使うんだよ」
「良いか、一日目は普通にパンツをはく。二日目はそのパンツを裏返しにはく。三日目はパンツを前後逆にはく。四日目は前後逆にはいていたパンツを裏返す。」
「こうすると一枚のパンツを四日間はくことができるだろ。ここまではいたらこのパンツは洗って、その間は予備のパンツをはく」

(心の叫び)「はたしてこの小野寺さんの推奨するパンツ活用術は山男の身だしなみといえるのだろうか?あまり清潔には思えないのだが。。。」
「このすばらしい方法を実行する時、注意することがある。それはうんこをパンツに付けないことだ。」「うんこが付いたパンツを前後逆にはくと玉袋にうんこがついてしまうなぁ。うんこが付いてしまった場合は前後逆にはくのは断念して裏返しするだけにしろよ!」「この場合はこのパンツの寿命は二日間だ」
(心の叫び)「うんこが付いたパンツを裏返してはくと、うんこがズボンについてしまい、かえってマズイことになるような。。。しつこいようだけどこれが山男の身だしなみだろうか?」
「パンツを一日しかはけない場合が有るが、どういう場合か分かるか?」
「???」
「すこし考えれば分かることなんだが。。。それは漏らしたうんこが水っぽくて表まで染み込んでしまった場合だ。この時はパンツを裏返しにも前後逆にも出来ないから山男らしくスパッと諦めて一日でパンツをはき替えることだ。
(心の叫び)「小野寺さんのその真剣な眼差し。だけど説得力が無いのは。。。」

このパンツ活用法を聞いて「良い話を聞いたぞ」と思う反面、どこかだまされている様な気もしないではない。いつか試してやろうと心の奥深く暖めていたのだが、4日以上の縦走でしかこの威力は分からないので中々その機会は訪れなかった。だがとうとうその機会がやってきた。夏の連休を利用して南アルプスを縦走することにしたからだ。

一日目:駒ケ岳神社から黒戸尾根を登り七丈キャンプで幕営。濡れたタオルで体を拭いた後にパンツを裏返してみた。汗がじっくりと染み込んでいるだろうから裏返しにしてみても洗い立てのパンツのような爽快感は無い。しかしパンツをはき替えるという肉体的な動作が脳を刺激するのか、ほんの少しだけリフレッシュした気分になる。

二日目:北沢峠まで降りて仙丈岳に登り、仙丈小屋で幕営する。ここでとうとうパンツ前後逆作戦を実行してみた。
しかしはき替えたとたんにすごく違和感を感じてしまった。何だろうこの違和感は。。。?
例えば。。。Tシャツを後前逆に間違えて着た時と似ている。喉に圧迫感を感じてしまい、最初は「あれっ、なんか変だぞ!」と戸惑いうが次の瞬間には後前逆に着てしまった自分を苦笑してしまう。
パンツの前後逆の場合はこれ以上の違和感を感じる。
いままでお尻をすっぽり覆っていた空間がそのまま前に移動したわけだからパンツの前はフカフカ膨らんでいてオチンチンの座りが悪い。普段は自閉的な彼もいきなり開放的な空間にすっかり居場所を探しているようだ。
逆にいままでパンツの大半を占有していたお尻は急に狭くなったパンツに慌てている。お尻の下半分がパンツからはみ出してとてもかっこ悪い。これが先輩の言っていた山男の身だしなみなのだろうか?
安定しないオチンチンとはみ出したお尻では安心感など全く無くどうも落ち着かない。これはパンツにおける海彦・山彦現象ではなかろうか?お互いの新地開拓のつもりが慣れない事に能力を発揮できずに逆に低迷してしまっている。

このパンツ活用法は少なくとも僕には合わない。元のようにパンツをはき直そうとした。しかし一度脱いだパンツを再びはくのはあまり気持ちが良い事ではないことに気がついた。ここまま逆にはいているのも嫌だが元に戻すのも嫌だ。進むことも戻ることも出来なくなってパンツに追い込まれてしまったバカな僕。
しかたなく予備のパンツにはき替えた。

結論、パンツを裏返しにはくのは良いが、前後逆は違和感を感じてダメだった。今回はブリーフで試したがトランクスは良いかもしれない。でも僕は登山中はブリーフ派なのでトランクスを試す機会は無いだろう。
だけど少しも残念だとは思わないのだった。

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